行方不明の相続人がいる場合の遺産分割の進め方は?
行方不明の相続人がいる場合の遺産分割の進め方は?
失踪宣告や不在者財産管理人の選任により遺産分割協議を有効に成立させることができます。
1 概説
相続は、被相続人の「死亡によって開始」し(民法882条)、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継」します(民法896条)。この時、相続人が複数いる場合、遺産は「共有」となります(民法898条1項)。この共有状態となった遺産を各相続人に分配する手続が遺産分割です。
遺産分割の方法には、現物分割、価格分割、代償分割があり、それぞれにメリット・デメリットがありますが、この記事では割愛します。
2 相続人の中に不在者がいる場合の遺産分割協議
⑴ 遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があり、参加すべき相続人を除外してされた遺産分割協議は無効です。そのため、相続人に行方不明者がいる場合にはそのままで遺産分割協議を成立させることはできません。
そこで、①失踪宣告(民法30条、31条)を待って遺産分割協議をする、②不在者のための財産管理人(民法25条1項)を選任しその財産管理人を加えて遺産分割協議をする、という方法が考えられます。
なお、民法上の「不在者」とは、従来の住所又は居所を去って容易に戻ってくる見込みのない者をいい、具体的な生死が不明であるかどうかは無関係です。
以下、①及び②の流れを説明します。
⑵ ①の方法による場合
失踪宣告とは、不在者を法律上死亡したものとみなす制度であり、家庭裁判所に対し失踪宣告の申立てをします。申立権者は利害関係人であり、不在者以外の相続人もこれに含まれます。
失踪には、普通失踪と特別失踪の2種類があります。
普通失踪の場合、不在者の生死が7年間明らかでないとき、失踪宣告を受けることにより、期間満了時に死亡したものとみなされます(民法30条1項、31条前段)。
特別失踪は、「戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者」が対象です。つまり、不在者が死亡の蓋然性が高い危難に遭遇した場合に認められる失踪宣告です。特別失踪の場合、危難が去った後1年間生死が明らかでないとき、失踪宣告を受けることにより、その危難が去った時に死亡したものとみなされます(民法30条2項、31条後段)。
いずれの場合でも、不在者が死亡した扱いとなることで、遺産分割協議に参加させる必要がなくなります。
⑶ ②の方法による場合
不在者のための財産管理人を選任するためには、家庭裁判所に対し、財産管理人選任の申立てをします。申立権者は、利害関係人又は検察官です。
申立てにより財産管理人が選任された場合は、その財産管理人を含めて遺産分割協議を行うことにより有効な遺産分割協議を成立させることができます。
3 おわりに
遺産分割協議には、遺産範囲確定のための調査や相続人の特定など、多くの時間と労力が見込まれるケースも少なくありません。本件のように相続人の中に行方不明者がいる場合、失踪宣告や財産管理人選任の申立てを先行して行う必要が出てくることもあります。トラブルを防ぎながらスムーズな遺産分割協議を行うためにも、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
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