未成年者の相続人がいる場合の遺産分割の進め方は?
法定代理人や特別代理人が当該未成年者に代わり協議に加わることで遺産分割協議を有効に成立させることができます。
1 概説
相続は、被相続人の「死亡によって開始」し(民法882条)、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継」します(民法896条)。この時、相続人が複数いる場合、遺産は「共有」となります(民法898条1項)。この共有状態となった遺産を各相続人に分配する手続が遺産分割です。
遺産分割の方法には、現物分割、価格分割、代償分割があり、それぞれにメリット・デメリットがありますが、この記事では割愛します。
2 相続人の1人が未成年者の場合の遺産分割協議
⑴ 遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があり、参加すべき相続人を除外してされた遺産分割協議は無効です。そして、未成年者は法的に遺産分割協議をすることができません。そのため、相続人である当該未成年者をそのまま遺産分割協議に加えて署名押印させても無効となります。そこで、未成年者の相続人がいる場合には、①当該未成年者が成年に達した後に遺産分割協議をする、②未成年者の法定代理人が遺産分割協議をする、という方法が考えられます。ただし、②は注意が必要です。
⑵ ②の方法による場合の注意点
未成年者の法定代理人はその親(親権者)であることが通常です。しかし、例えば、夫が死亡した場合で相続人が妻と未成年の子の2人である場合、当該未成年者と母親は同順位の相続人となります(民法887条1項、890条)。この場合、未成年者の父親の遺産を未成年者と母親で分け合う関係にあるのですから、母親の取り分が増えれば当該未成年者の取り分は減り、反対に、当該未成年者の取り分が増えれば母親の取り分は減ることになります。つまり、母親が相続放棄をしない限り、当該未成年者と母親は利益が相反する関係にあることになります。このような場合には、母親は当該未成年者の法定代理人として遺産分割協議をすることはできません。そのほか、相続人となる未成年者が2人以上いて母親が相続放棄をした場合にも、未成年者同士の利益が相反する関係にあるため、母親は未成年者の子の法定代理人になることはできません。
このように未成年者の親が法定代理人になれない場合、遺産分割協議をするためには当該未成年者のために特別代理人を選任する必要があります(民法826条)。
特別代理人の選任は、未成年者の所在地を管轄する家庭裁判所に特別代理人選任の申立てをします。最終的な選任は家庭裁判所の判断になりますが、申立てにあたって特別代理人の人選について希望(例えば、祖父を選任してほしいなど)を出すことは可能です。
3 おわりに
遺産分割協議には、遺産範囲確定のための調査や相続人の特定など、多くの時間と労力が見込まれるケースも少なくありません。本件のように相続人の中に未成年者がいる場合、特別代理人の選任を先行して行う必要が出てくることもあります。トラブルを防ぎながらスムーズな遺産分割協議を行うためにも、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
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